激励メッセージ

 現代文講師の長島です。まずは1年間ありがとうございました。皆さんと勉強できたことを光栄に思っております。私の授業は終わりましたが、まだまだ皆さんの勉強は続くと思います。むしろこれからが本当に大変な時期でしょう。よく言われるように、直前期が最も学力を伸ばせる時期だからです。ですが、この「直前期こそ伸びる」という言葉に疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは、その真偽を考察してみたいと思います。それが皆さんのモチベーションにつながれば幸いです。

 卑近な例で恐縮ですが、私の書いた参考書は誤字脱字が多く、Amazonでもしばしば厳しいご指摘をいただいております。原因は簡単で、スタッフに校正を丸投げしているためです。スタッフのみんなも頑張ってくれているのですが、やはり書いた当人でないと見えないものも多いですから、限界があります。そこで最新刊では一計を案じ、校正作業を細分化するようにお願いしました。まずは傍線や空欄が正しく付されているか「だけ」を確認し、次に設問部分を見て、問いが抜けていないか「だけ」を見る。そして、解答が適切か「だけ」をチェックして……といった具合です。これによってかなりミスが減ったと信じています。

 上記のアイデアは、学生時代の経験が元になっています。まだ18歳の時だったと思います。当時から国語の講師していたのですが、私は漢字の採点が苦手でした。×のものに〇をしてしまうといったことが頻繁にありました。そんな私に先輩講師が「最初から〇と×を付けようとしない方がいいですよ。まずは×『だけ』付ける。そして残ったものが○かどうかを判定していく。そうすればミスが減ります。」とアドバイスしてくれたのです。確かにそれで劇的に採点ミスが減りました。

 要するに、考えるという営みは、無から何かを生み出すのではなく、手持ちのカードを活用していくものだということです。手持ちのカードというのは、過去の経験や覚えている知識のことを指します。今回の私は、漢字の採点にまつわる経験を活用して、校正作業の改善案を考えたわけです。

 さて、今の自分と4月頃の自分を比べてみてください。これまでたくさんの勉強をしてきたと思います。その分だけ、手持ちのカードも増えているのではないでしょうか。カードが多いということは、それだけたくさん考えられるということです。それは思考力が高まっていることを意味します。そして、その状態であれば、解答プロセスが身につきやすくなります。暗記も捗ります。理解しながら覚えられるからです。

 直前期は、このような思考力が高まった状態で学習できますから、今までよりも力を伸ばしやすいのです。だから、「直前期こそ伸びる」という命題は真だったと言えるでしょう。しかし、油断はできません。ライバルたちも同じような状況にあります。だから、ここでギアを緩めると、ライバルとの差が一気についてしまいます。この学力伸長の機会を逃さず、活用し切っていきましょう。皆さんが笑顔で入試を終えられることを、心よりお祈り申し上げます。